一般的に、『身障者向け住宅』はバリアフリーであることが第一条件とされています。車椅子を使用する方や視覚に障害をお持ちの方にとって、『段差』は大きな障害となるので、バリアフリーが望ましいのは当然のことでしょう。でも、例えば聴覚に障害のある方にとっては、バリアフリーよりもむしろ聴覚を別の方法でフォローする環境作りの方が重要です。たとえば家族の居場所や人の出入りを目で確認しやすいように、逆に『段差』のあるスキップフロアにしたり、間仕切りを少なくして視界をさえぎらないようにする工夫が必要になってきます。ですから、全ての障害に対して有効な仕様は存在しないのです。
車椅子を利用している方の場合でも、『外では電動車椅子を使用し、家の中では室内用車椅子を使用している』場合と、『内も外も電動車椅子を使用している』場合とでは、住まいの仕様が異なってきます。それに最近の電動車椅子はオーダーメイド化が進み、高さや幅もそれぞれに異なるので、標準サイズのエレベーターなどを導入しても中に入れず使えない場合があります。ですから、必ず器具に合わせた設備を導入するよう注意が必要です。さらに、介護の要・不要によっても、家づくりに対する考え方は異なってきます。常に介護を必要とする方にとってはプライバシー保護の問題や、介助者が安全で介助しやすい方法を考える必要が出てくるので、充分な配慮が必要です。
玄関にスロープをつけたけれど、角度がきつくて車椅子の操作が困難だという話を時々聞きます。逆に、角度を緩やかにするためにスロープを迂回させて長く距離をとったせいですごく遠回りになってしまったという例も聞きます。
緩やかなスロープを作るにはどうしても玄関までの距離が必要なのですが、立地条件上距離が確保できない場合には、費用は掛かりますが『段差解消機』などの設備を利用すれば問題を解消できます。どちらにしても設計者や施工者、介助者を交え、実際に何度もシミュレーションを重ねた上で最適なプランを考えることが重要です。