当事者にとって住みやすい家が、介護しやすい家であるとは一概に言えないと思います。とにかく介護する側にとって一番重要なのは『スペース』。特に浴室やトイレなどは介助者も一緒に入って介助ができるスペースを確保しなければなりません。その他、ベッドまわりは右左前後にスペースをとり、どちらからも介助の手が出せる状態が望ましいと思います。
室内の戸は、引き戸で軽いものにすることが基本です。車椅子の出入りがしやすいように、幅も当然広い方がいいでしょう。
手すりは最近多くのお宅の玄関先で見かけるようになりましたが、ただ適当につけたのでは何の役にも立ちません。玄関での動作を充分にシミュレーションした上で、高さや位置を決める必要があります。
それと、浴室にも利き手に合わせた位置に手すりがついていることがよくありますが、実際のところ、手すりが必要になった際に利き手が使えるかどうかなんてわかりませんよね・・・。利き手の自由がきかなくなる場合だって考えられるでしょう?誰も将来の予測はできませんから、あくまでも現在の状況に合わせて設置するしかないという部分もありますね。
家具を選ぶ際にも、細かい部分のチェックが必要です。例えば、車椅子の方に配慮してアプローチにはスロープを設け、入り口は広くとり、フロアはバリアフリー、トイレも使いやすいよう万全に整えたカフェがあるとします。車椅子の方も楽々とお店に入ることができ気分も上々、いざ席につこうとしたら、テーブルの脚が邪魔で車椅子をテーブルに近づけられない・・・そんなことが実はよくあるのです。ですから、家具を選ぶ場合はサイズや高さだけでなく、脚の形状など細かい箇所を点検しなければせっかくの空間が台無しになってしまうのでご注意下さい。
車椅子や介助の必要な場合はトイレ内もスペースにゆとりを持たせることが必須条件です。ただし、そうでない場合はスペースをそんなに必要としません。手すりにしても、使わない時には折りたたんで収納できる可動式のものがありますから、スペースが狭い場合はそういうものをうまく利用するといいと思います。
浴室は、浴槽の深さや洗い場との位置関係など様々な要素が複雑に絡み合ってきます。その上、介助が必要な場合は入浴する側だけでなく介助する側の利便性も考えなければならないので、非常に設計が難しいスペースだと思います。それに生活習慣や入浴の捉え方も人それぞれで、ただシャワーが浴びられればいいと思う人もいるし、ちゃんと湯船につかりたい人もいるわけですから、そのニーズを正確に把握してじっくりとプランを考える必要があると思います。でも、どんなに理想的な浴室ができあがったとしても、実際に使って様子を見ながら細かい箇所を微調整していく必要は出てくるでしょうね。
入浴が困難な方は、訪問入浴サービスなどを利用されてもいいと思います。浴槽やタオルなどの必要な器具を居住空間に持ち込んでセットし、訪問入浴車からお湯を送るようなシステムになっているので、特別な準備も必要なく便利だと思います。もちろん室内に浴槽を持ち込めるようなスペースは必要ですから、その点は確認が必要です。